中国で最も利用されているアプリ「WeChat(微信)」が、2025年の春節に合わせて、新たに春節お祝い紅包(拜年紅包)やギフト(礼物)機能をリリースしました。
これらの新機能は、WeChatユーザーの利便性向上だけではなく、微信小店の出店事業者に対して売上アップのチャンスを生み出しています。
この記事では、WeChatのお年玉とギフト機能の使い方やメリットに触れ、中国EC市場にどのような影響を与えているのか詳しく解説します。
※本記事は、2025年2月3日時点での情報を掲載しています。
WeChat(微信)が中国EC市場に与える影響

中国の大手IT企業テンセントが提供する「WeChat(微信)」は、世界で月間アクティブユーザー数13億人以上を誇るチャットアプリです。
WeChatに完全統合されたEC機能「微信小店(WeChat ミニショップ)」は、中国における消費者行動に決定的な影響を与えるプラットフォームと言われています。
2025年、WeChatは春節(旧正月)に合わせて、2014年から搭載されているお年玉(紅包)機能を強化し、さらに、微信小店の商品をチャット上で贈れるギフト(礼物)機能を新たに提供し、注目を集めました。
これらの機能は、購買行動を「ソーシャルシェア型」に変化させる要因となるものです。
微信小店の出店事業者にとって、ブランドと消費者の直接的な接点を構築する鍵として注目されています。
WeChatの新しい春節お祝い紅包(拜年紅包)機能とは

中国では、旧正月や結婚式などのお祝いごとに際し、紅包と呼ばれる赤い封筒にお金を入れて贈る習慣があります。
WeChatには、デジタル化したお年玉をフレンドに送信できる紅包機能が2014年から搭載されており、受取人がサプライズボックスを開封できるという楽しみがあります。
最新バージョンの春節お祝い紅包(拜年紅包)では、祝福の言葉を録音し、そのメッセージを添付したお年玉をフレンドに送信することが可能となりました。
祝福メッセージは、大切な人やお世話になっている人に対して、ささやかな感謝の気持ちを届けられる新たなコミュニケーションとして注目されています。
春節お祝い紅包(拜年紅包)機能のメリット

WeChatの春節お祝い紅包(拜年紅包)には、以下のようなメリットが挙げられます。
- チャット感覚で簡単に個人間送金ができる
- お年玉の金額がランダムなため、開封する側にワクワク感がある
- お年玉のデザインを自由に変えられる
シンプルながらも楽しいお年玉機能は、新年の挨拶をよりインタラクティブにし、家族や友人との絆を強めるきっかけになっています。
春節お祝い紅包(拜年紅包)機能の使い方

春節お祝い紅包(拜年紅包)機能の使い方はシンプルなため、誰でも手軽に好きな相手にお年玉と祝福メッセージを届けられます。
以下で、具体的な使い方を解説します。
①チャットから「紅包」を選択する
お年玉機能を利用する場合は、WeChatのチャット画面で「+」ボタンをタップします。

ポップアップメニューから「紅包」を選択しましょう。

さらに「拜年紅包」というオプションを選びます。
通常の紅包に関しては、結婚式や誕生日などのお祝いごとで使用されます。
②音声メッセージを録音する
画面に表示された画像の音声ボタン(マイク)を長押しすると録音モードになり、音声メッセージを添付することができます。

音声メッセージを録音しなくても、紅包を送ることは可能です。
③金額とお祝いメッセージを決定する(ランダム)

お年玉として送る人民元の金額は、以下の5種類からランダムで決定します。また、金額に合わせてお祝いメッセージが表示されます。
- 1.66:健康で平和な一年が過ごせますように
- 2.88:家族みんなが楽しい1年を過ごせますように
- 6.66:新しい年が順調に過ごせますように
- 8.88:新年に沢山儲けますように(金運アップ)
- 9.99:福が沢山訪れますように
お年玉の金額やお祝いメッセージを自分で設定することはできません。
④簡易的なグラフィックの追加(自動的)
メッセージを録音した場合、AIによる音声解析で簡易的なグラフィック効果が追加されます。

グラフィック効果は、左上に「新年快乐」などと表示されます。
⑤お年玉を開封する(受け取り側)
お年玉(紅包)を受け取ると、チャット画面に以下のような画面が表示されます。

画像をタップして、お年玉(紅包)を開封しましょう。
音声なしとありで、受取画面は以下のように異なります。

音声を聞けない状況で受信した場合、再生ボタンを押すとメッセージを聞くことが可能です。
WeChatの新しいギフト機能(礼物)とは

2025年1月、WeChatの最新バージョンにて、新たにギフト機能(礼物)がリリースされました。
ギフト機能とは、微信小店(WeChat ミニショップ)からギフト対象の商品を選び、任意のフレンドにプレゼントとして贈れる機能のことです。
送信者は、WeChatのチャットに追加されたオプションの「礼物」を選択し、住所入力なしでフレンドに商品ギフトを届けることが可能です。
また、個人チャットだけではなく、グループチャット版におけるギフト機能も誕生しており、お年玉(紅包)に対を成す「藍包」とも呼ばれています。
ギフト機能の導入が春節(旧正月)の時期と重なったことで、紅包のようなソーシャル効果をもたらすことが期待されています。
ギフト機能(礼物)の使い方

WeChatのギフト機能は、微信小店のルールを満たす商品でのみ利用可能です。
では、実際にどのような手順を踏んで商品ギフトを贈れるのか詳しく説明します。
①チャットから「礼物」を選択する
まず、ギフトを贈りたいフレンドとのチャット画面を開きます。
そして、チャット入力画面の右横にある「+」をタップしましょう。

ポップアップメニューの「礼物」がギフト機能に該当するため、それを選択します。
②メッセージを入力する
「礼物」を選択すると「送礼物」という画面が表示されます。

送信先、メッセージ、ギフトの種類、金額、支払い&送信ボタンが表示されるため、まずはギフトに添付するメッセージを記入しましょう。
③対象の商品を探す
「送礼物」の枠をタップすると、ギフト対象商品がある微信小店が表示されます。

上部の検索フォームから、商品名や店舗を探すことが可能です。
ギフトは、微信小店で1万元(約20万円)以下の商品のみ選択できます。
例えば、ミルクティーやお菓子、衣類、本・雑誌、日用品など、送付できるギフトの種類は豊富です。
ジュエリーや教育関連などの一部のカテゴリーは、ギフト対象外となっています。
④ギフトを送信する
最後に、送る対象者や商品ギフトの金額を確認し、「支払い&送信」のボタンをタップしましょう。
支払いが完了すると、自動的にギフトが送信されます。
配送先の住所についてはギフトを受け取るユーザー側で行うため、送信者が入力する必要はありません。
ギフト贈呈後、24時間にわたって受け取りされなかった場合、商品の購入がキャンセルされて返金が行われます。
ギフト機能(礼物)のメリット

WeChatのギフト機能は、送受信側のユーザーにも出店事業者にも多くのメリットをもたらしています。
具体的にどのような利点があるのか解説します。
ユーザー側のメリット
ユーザー側は、日常的に活用しているチャット上で、シームレスなギフトの送受信体験を楽しむことができます。
- 【送信側】住所入力なしで手軽に商品ギフトを贈れる
- 【送信側】旧正月や結婚などに際し、デジタルでギフトを送信できる
- 【送信側・受信側】ギフト交換を楽しめる
アップデートにより、送信側で住所入力をする手間もなくなったため、簡単かつスピーディーな活用でユーザーの満足度を向上させています。
出店事業者側のメリット
微信小店に出店している事業者側としては、単純に商品・店舗の売上アップに繋がることが大きなメリットとなります。
- ギフト対象商品の売上がアップする
- ユーザーの購買習慣を促進できる
- 店舗の新たな流入経路を確保できる
例えば、梨ジュースやさくらんぼが売れ筋商品の「东方甄选」WeChat ミニショップでは、全体の売上における約80%がギフト機能によるものとされています。
店舗でギフト対象商品を設けることで、新たなユーザーのアクセスポイントを作れるため、プロモーション効果の増大にも期待ができます。
ギフト・春節お祝い紅包(拜年紅包)機能が使えない場合の対処法

WeChatを使っているのに、ギフトとお年玉機能が表示されない場合、バージョンが古い可能性があります。
まずは、WeChatの最新バージョンへアップデートしましょう。
WeChatをアップデートしたい場合、以下の2つの方法があります。
一つは、WeChatのアプリ内から「バージョン確認画面」を選び、App Storeへ遷移する方法。
もう一つは、スマートフォンで直接App Storeを開き、「WeChat」と検索する方法です。
App Storeに表示されたWeChatの横に「開く」と表示されていれば、現時点で最新バージョンを使っていることになります。
「アップデート」と表示されていた場合は、タップして最新バージョンにしましょう。
WeChatの新機能リリースによる中国EC市場の動向

WeChatが本実装したギフト機能は、中国の主要なECプラットフォームに多大な影響を与えました。
また、微信小店の出店事業者にも新たな売上アップの機会が到来しています。
最後に、WeChatのギフト機能リリースにおける中国EC市場の動向をみてみましょう。
中国ECプラットフォームの動向
WeChatのギフト機能は、個人チャットやグループチャットを活用した革新的なソーシャルコマースモデルを実現しました。
これにより、競合するECプラットフォームのJD.com(京東)やTaobao(淘宝)、Douyin(抖音)なども同様のギフト機能を相次いで導入しています。
例えば、JD.com(京東)は「京東送礼機能」をリリースし、Taobao(淘宝)も「送礼」機能をリリースしました。
WeChatの成功が他社に模倣され、EC市場全体で顧客体験の向上を競う新たな競争局面に入ったことを示しています。
さらに、WeChatのギフト機能はソーシャルメディアとECを統合しているため、バイラル効果を通じた効果的な市場拡大に繋がります。
特に春節などの大事なイベント期には、短期間で大規模なトラフィックと売上を生み出すことも可能です。
中国EC出店事業者への影響
微信小店の出店事業者にとって、WeChatのギフト機能導入は新たな売上向上のチャンスです。
「ギフトを贈る」という購買体験が増えたことで、新たな流入経路の確保と新規顧客獲得が期待できます。
さらに、WeChatで贈られたギフトがチャット画面に表示されることでブランド認知を高め、リピート購入を促進する効果もあります。
グループチャット向けのギフト機能「藍包」も登場しており、事業者は複数の顧客に一括でアプローチできるようになりました。
グループ全体での商品の口コミ効果が生まれれば、これまで以上にトラフィックを集められる可能性があります。
こうした最新のソーシャル機能を活用することで、競争優位を築き、EC市場におけるポジションを強化できるでしょう。
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WeChatおよび微信小店の機能強化は、時に中国における消費者行動に影響を与えます。
特に、この度リリースされたギフト機能(礼物)は、微信小店で新たな購買行動を生み出す可能性があるため、出店事業者は要注目です。
また、WeChatに限らず、競合となるJD.com(京東)やTaobao(淘宝)の動向もチェックし、新たな中国ECの戦略策定に活かしましょう。
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