日本の観光業界は、台湾・香港・中国からの観光客の増加により、かつてない盛り上がりを見せています。
これらの地域の訪日観光客は、日本に対する文化や体験、製品などに強い関心を持っており、日本での消費額に大きく貢献しています。
そのため、インバウンド対策を課題とする店舗や商業施設では、訪日観光客の特徴を掴み、消費動向に即した施策の実施が有効です。
この記事では、台湾・香港・中国観光客を対象としたインバウンド消費の動向について徹底解説します。
台湾・香港・中国からのインバウンド消費が増加

観光庁が公開した「インバウンド消費動向調査(2024年暦年の調査結果)」によると、訪日外国人の旅行消費額は8兆1,395億円と暦年で過去最高を記録しました。

特に、台湾・香港・中国の3地域は、旅行消費額のトップ層を形成し、日本のインバウンド市場を支える重要な存在となっています。
コロナ禍から急速に回復したインバウンド市場において、店舗・商業施設では、これら3地域の観光客の需要を的確に捉えた施策が重要視されます。
特に、多言語対応や地域の文化に即した決済方法の導入、観光客の満足度を向上させるための取り組みが、インバウンド対策には欠かせません。
台湾・香港・中国からのインバウンド客の特徴

台湾・香港・中国からの観光客は、日本のインバウンド市場における消費量に大きな影響を与える重要な存在です。
それぞれの地域によって、観光客の目的や消費傾向、旅行スタイルに特徴が見られます。
以下では、国土交通省観光庁が公開した「インバウンド消費動向調査(旧 訪日外国人消費動向調査)」に基づいてインバウンド客の特徴を紹介します。
台湾からのインバウンド客の特徴
台湾からの訪日観光客は、高いリピーター率、女性の割合の高さ、比較的長い滞在期間が特徴的です。
【台湾観光客の特徴】
- 年齢:20~40代が中心
- 男女比:男性45%、女性55%
- 訪日の主な目的:観光・レジャー
- 平均滞在期間:約6.0日
- リピーター率:90%以上
特に20〜30代の女性の訪日が目立ち、日本文化や四季の魅力を求めて何度も訪れる傾向にあります。
香港からのインバウンド客の特徴
香港からの訪日観光客には、高い消費力と個人旅行を好む傾向が際立っています。
【香港観光客の特徴】
- 年齢:20~40代が中心
- 男女比:男性47%、女性53%
- 訪日の主な目的:観光・レジャー、ショッピング
- 平均滞在期間:約6.8日
- リピーター率:約90%
20~40代で女性の割合がやや多く、都市観光や日本の伝統文化の体験、ショッピングを主な目的としています。
平均して1週間前後日本に滞在する傾向にあり、日本の魅力に触れた多くの方が再訪日されています。
中国からのインバウンド客の特徴
中国からの訪日観光客は、旅行消費額が他の地域と比べて高い傾向にあります。
近年は若年層の訪日が増加傾向にあり、多くの方が観光・レジャーを目的としています。
【中国観光客の特徴】
- 年齢:20~30代が中心
- 男女比:男性46.6%、女性53.4%
- 訪日の主な目的:観光・レジャー、ショッピング
- 平均滞在期間:約9.3日
- リピーター率:約60%
香港・台湾と比べて、中国からの訪日観光客は平均滞在期間が1週間〜約2週間とかなり長いです。
日本の文化体験や自然観光に強い関心を持ち、近年では地方都市への訪問も増加傾向にあります。
台湾・香港・中国観光客が期待する行動内容

台湾・香港・中国からの訪日観光客の多くは、絶品の日本食を堪能したり、信頼できる品質の日本製品を購入したりする体験に期待しています。
ここでは、日本政府観光局(JNTO)が作成した「訪日旅行に関する期待内容」に基づき、日本でのどのような体験に期待しているのか紹介します。
台湾観光客の場合
以下の調査結果からわかるように、台湾からの訪日観光客は和食文化に高い関心を示しています。
【訪日旅行で実現したいこと】
- 日本食を食べる:80%
- 買い物をする:69%
- 自然・景勝地の観光をする:58%
- 繁華街を歩く:56%
- 温泉・入浴を楽しむ:31%
例えば、国産の肉料理や外国人に大人気のラーメン、魚料理などは、日本で堪能したいグルメに挙げられます。
日本でしか味わえない体験を求める傾向にあり、伝統的な文化が根付いた地方の観光や繁華街巡りも、台湾観光客が訪日する大きな目的になっています。
香港観光客の場合
香港からの観光客も、日本独自の食文化や食品に強い関心を持っています。
【訪日旅行で実現したいこと】
- 日本食を食べる:83%
- 買い物をする:70%
- 自然・景勝地の観光をする:55%
- 繁華街を歩く:54%
- 温泉・入浴を楽しむ:35%
例えば、日本らしさのある庶民的な和食レストランや居酒屋は、多くの香港人観光客が「行ってみたい」と思っている場所です。
また、訪日した際には「日本でしか買えないスナック菓子や、コンビニの食品を買いたい」という方も多くいます。
中国観光客の場合
中国観光客は、台湾や香港の方と比べて、高品質かつコスパに優れた日本製品を購入するために訪日される方が多いです。
【訪日旅行で実現したいこと】
- 日本食を食べる:69%
- 買い物をする:59%
- 繁華街を歩く:50%
- 自然・景勝地の観光をする:49%
- 農業体験をする:31%
- 温泉を楽しむ:28%
かつて「爆買い」が話題になったように、家電量販店での安売りや限定品の販売は、中国観光客が楽しみにしている体験の一つです。
最近では、農業体験や温泉など、日本の伝統文化に直接触れられるアクティビティの人気も高まってきています。
台湾・香港・中国からのインバウンド消費動向

訪日外国人による日本での消費量は、コロナ禍前の2019年と比べて大きく増加しています。
ここからは、観光庁による「インバウンド消費動向調査(2024年暦年(速報)」と「訪日外国人消費動向調査 2023年 年次報告書」の情報に基づいて、台湾・香港・中国訪日客の消費動向を解説します。
台湾からのインバウンド消費動向
台湾からの観光客は、日本製品への信頼を背景として、買い物に対する消費額が比較的大きくなっています。
【1人あたりの旅行支出(観光・レジャー)】
- 旅行支出の総額:188,193円(前年比-0.5%、2019年比+59.1%)
- 宿泊費総額:54,085円
- 飲食費:39,135円
- 交通費:17,891円
- 娯楽等・サービス費:8,201円
- 買物代:68,853円
- その他:28円
引用元:インバウンド消費動向調査(2024年暦年(速報)|観光庁
1人あたりの旅行支出は188,193円で、コロナ禍前の2019年比で59.1%増加しました。
買い物代は全体の36%を占めており、菓子類や医薬品、美容関連商品が特に人気です。
台湾観光客に人気の商品
観光庁による調査で、訪日台湾観光客の買い物ランキング(購入率に基づく)が公開されています。
【訪日のお土産で買いたい商品】
- 1位:菓子類:77.9%
- 2位:医薬品:48.2%
- 3位:衣類:42.2%
- 4位:その他、食品・飲料・タバコ:40.7%
- 5位:鞄・靴・革製品:29.68%
- 6位:化粧品・香水:29.2%
- 7位:健康グッズ・トイレタリー:24.5%
- 8位:酒類:16.1%
- 9位:電気製品:11.4%
- 10位:生鮮農産物:9.5%
引用元:訪日外国人消費動向調査 2023年 年次報告書|観光庁
購入率77.9%で圧倒的1位となったのが菓子類で、購入者の満足度調査でも1位を獲得しています。
続いて、医薬品や衣類、食品・飲料なども、多くの台湾観光客がお土産として選んでいます。
香港からのインバウンド消費動向
香港からの観光客は、1人あたりの旅行支出が248,011円と台湾を上回っています。
買い物代と飲食費で全体の50%以上を占めており、特に菓子類や衣類の購入が人気です。
【1人あたりの旅行支出(観光・レジャー)】
- 旅行支出の総額:248,011円(前年比-9.1%、2019年比+59.0%)
- 宿泊費:73,716円
- 飲食費:53,576円
- 交通費:22,629円
- 娯楽等・サービス費:8,882円
- 買物代:88,762円
- その他:447円
引用元:インバウンド消費動向調査(2024年暦年(速報)|観光庁
旅行支出の総額は、前年比で-9.1%となりましたが、それでも品質の高い日本製品への需要が顕著にみられます。
香港観光客に人気の商品
香港観光客が選ぶお土産でも、菓子類が一番人気となっています。
【訪日のお土産で買いたい商品】
- 1位:菓子類: 70.3%
- 2位:衣類:52.8%
- 3位:医薬品:38.5%
- 4位:その他、食品・飲料・タバコ:38.5%
- 5位:鞄・靴・革製品:37.1%
- 6位:化粧品・香水:34.5%
- 7位:健康グッズ・トイレタリー:13.8%
- 8位:酒類:13.3%
- 9位:生鮮農産物:9.4%
- 10位:民芸品・伝統工芸品:4.7%
引用元:訪日外国人消費動向調査 2023年 年次報告書|観光庁
一人あたり平均で11,418円を菓子類に消費しており、コンビニやドラッグストアが多く利用されています。
顧客単価では、鞄・靴・革製品のカテゴリーが29,951円と最も高いですが、購入率は37.5%と低めです。
中国からのインバウンド消費動向
中国からの観光客は、1人あたりの旅行支出が277,747円と最も高く、買い物代が全体の43%を占めます。
【1人あたりの旅行支出(観光・レジャー)】
- 旅行支出の総額:277,747円(前年比-13.2%、2019年比+30.5%)
- 宿泊費:73,590円
- 飲食費:50,055円
- 交通費:21,949円
- 娯楽等・サービス費:12,771円
- 買物代:119,373円
- その他:10円
引用元:インバウンド消費動向調査(2024年暦年(速報)|観光庁
特に化粧品や鞄・靴などの高額商品が人気で、高品質な日本製品を求める消費傾向が見られます。
中国観光客に人気のお土産
中国観光客にも日本のお菓子が絶大な支持をされており、特に免税店で購入されるケースが多いです。
【訪日のお土産で買いたい商品】
- 1位:菓子類:72.7%
- 2位:化粧品・香水:52.2%
- 3位:医薬品: 36.9%
- 4位:衣類:36.0%
- 5位:その他、食料品・飲料・タバコ:34.1%
- 6位:鞄・靴・革製品:28.2%
- 7位:健康グッズ・トイレタリー:15.9%
- 8位:酒類:12.0%
- 9位:電気製品(デジタルカメラ/PC/家電等):10.7%
- 10位:民芸品・伝統工芸品:5.5%
引用元:訪日外国人消費動向調査 2023年 年次報告書|観光庁
台湾や香港の訪日観光客と比べて、買い物に重きを置いた旅行スタイルが特徴で、高級ブランドや実用性の高い商品も人気があります。
台湾・香港・中国観光客に人気のスポットや行動

台湾・香港・中国からのインバウンド客の多くは、日本食やお酒、都市・自然観光、ショッピングなどを楽しんでいます。
ここからは、観光庁が公開した「都道府県別訪問状況の分析」に基づいて、訪日観光客に人気のスポットや定番の行動パターンを紹介します。
台湾観光客の場合
台湾観光客は、主に沖縄、北海道、関東(東京)、関西(大阪)の4つの主要都市を中心に訪問しています。
例えば、沖縄では美しいビーチや琉球文化、北海道では雪景色や温泉、東京ではショッピングや最新テクノロジー体験、大阪では食文化や歴史的観光地が定番の楽しみ方に挙げられます。
特に、ユニバーサルスタジオジャパンや、東京ディズニーリゾートなどのテーマパークは大人気です。
最近では九州地方への訪問も増加しており、福岡や長崎などでの観光も注目されています。
また、台湾観光客は、日本食への関心が高く、寿司やラーメン、和牛などのグルメにも強い関心を示しています。
香港観光客の場合
香港観光客は、関東(東京)、沖縄、関西(大阪、京都)、北海道を主要な訪問先としています。
例えば、東京では銀座や渋谷でのショッピング、SHIBUYA SKYからの夜景観賞、沖縄では海洋博公園やちゅらうみ水族館、京都では金閣寺や清水寺などの歴史的建造物、北海道では雪まつりや温泉を楽しむ傾向があります。
また、日本食が好きな方も多く、寿司や刺身、回転寿司、鉄板焼き、居酒屋などの食文化体験は、香港人観光客にとって外せない要素です。
ファッションや美容関連商品への関心も高く、自身の好きなブランドのセール時期を狙って訪日し、大量購入する傾向も見られます。
中国観光客の場合
近年は北海道の注目度が高まっており、2024年の国慶節期間中には最も人気のある訪問先となりました。
絶景の雪景色や日本の伝統である温泉、絶品の海産物などが北海道の高い人気の秘密です。
他には、東京や大阪、京都などの都市を中心に訪問している傾向にあります。
東京では、秋葉原でのアニメ・マンガ関連の買い物、浅草寺や東京スカイツリーの観光、大阪ではユニバーサルスタジオジャパンや道頓堀での食事を楽しむ傾向があります。
レジャーやショッピングに加えて、富士山や箱根など、日本の宝である自然景観を楽しめる観光地も人気です。
中国観光客は買い物にも熱心で、特に化粧品や電化製品、ファッションアイテム、健康食品などを求める方が多いです。
【中国】春節期間中の訪日旅行に関する当社独自調査

当社は、中国の旧正月にあたる春節期間中(2025年1月28日〜2月4日)で、訪日予定の中国観光客の目的や行動、予算などをアンケート調査しました。
ここからは、同アンケートの調査結果を見ながら、中国インバウンドの最新動向を解説します。
中国観光客に大人気の地域は「北海道」

春節期間において、中国観光客に最も人気の地域となったのが「北海道」です。1,013名による回答のうち、68.6%から支持を得ており、圧倒的な人気を誇る結果となりました。
北海道が人気の理由として、多くの回答者が「美しい雪景色を見たい」「スキーを楽しみたい」「温泉に入りたい」と回答しています。
中国でも近年ウィンタースポーツの人気が高まっており、特にスキーはブームとなっています。春節期間が冬季に重なることも相まり、北海道でのウィンターアクティビティを楽しみたいと考える観光客が増えているようです。
北海道に続いて人気の東京は、ショッピングや最新トレンドを体験したい方に選ばれています。
関西では、ユニバーサルスタジオジャパンがある大阪や、日本の伝統文化と歴史的建造物を体験できる京都に高い需要があることがわかります。
日本旅行をするなら「グルメ」を楽しみたい

訪日中国観光客が楽しみにしていることが、グルメや温泉、冬景色の鑑賞、ショッピングなどです。
訪問先として人気の北海道は、毛蟹や牡蠣、ウニといった新鮮な海産物が旬を迎えるシーズンのため、美食を求めて訪日する観光客が多いことがわかります。
東京の高級寿司店や大阪のたこ焼きなどのB級グルメ、神戸牛や松阪牛などのブランド和牛も中国人観光客にとって魅力的な選択肢となっています。
温泉を目的として箱根や別府に行く予定の観光客も多く、北海道では露天風呂で雪景色を楽しむという贅沢も注目されています。
ショッピングもインバウンド観光客に人気の行動で、「免税店でブランド品や化粧品を買いたい」「ドラッグストアや家電量販店で実用的な商品を買いたい」という方はシーズンに限らず常に見受けられます。
6割以上が「21万円以上」の予算で訪日予定

春節期間中に予定している日本旅行の予算は、10,001元〜20,000元(21〜42万円)が最も多い回答(41.6%)となりました。
10,001元(21万円)以上を予算と考えている回答者は、全体の6割以上に及びます。一方で、低予算の5,000元(10万円)以下と回答したのは、全体の10%以下でした。
この予算で「誰のために」「どんな商品を買いたいか」という回答は以下のとおりです。

自分のために買いたい物で1位となったのが「化粧品」です。家族や親戚、友人などへのお土産として買いたい物は「お菓子類」が1位となりました。
また、「食品」に関しても多くの回答者が購入する意欲を見せています。
人気の宿泊施設は「伝統的な和風温泉旅館」

春節期間においては、3〜5泊する中国観光客が多く、特に人気の宿泊施設が「伝統的な和風温泉旅館」であることがわかりました。
また、ホテルよりも民泊を選んだ回答者が多く、リーズナブルな価格帯の宿泊施設の需要が高いことが見て取れます。
インバウンド観光客に人気の地域では、店舗の各種案内やメニューを中国語対応し、さらに中国で主流の決済方法「WeChat Pay(ウィーチャットペイ)」を導入するなどの対応が求められます。
まとめ
台湾・香港・中国からの訪日観光客は、高い消費意欲とリピーター率を持ち、日本のインバウンド市場で極めて重要な存在になっています。
その消費動向に注目することで、店舗や商業施設における課題が見つかり、時代に即した施策のアイデア立案に繋がります。
「インタセクト・コミュニケーションズ株式会社」では、中国をメインとし、店舗・商業施設のインバウンド対策を強力にバックアップするソリューションを提供しています。
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