商品を”ただ見せる”だけでなく、リアルタイムで”魅せて売る”新たな購買体験として注目されている、ライブ販売(ライブコマース)。
SNSや動画プラットフォームを活用し、誰でも気軽にライブ販売ができる時代となりましたが、中国ではすでに「巨大な売上を生むマーケティング手法」として普及が進んでいます。
一方、日本国内でもライブ販売の注目度が高まりつつあり、2025年6月には「TikTok Shop」がリリースされました。
この記事では、ライブ販売のメリット・デメリットや国内外のプラットフォームの違い、成功に繋げる秘訣まで徹底解説します。
ライブ販売(ライブコマース)とは

ライブ販売(ライブコマース)とは、ライブ配信とEコマース(電子商取引)を組み合わせた販売手法のことです。
小売業者やブランドが、ライブ配信プラットフォームを通じて視聴者とリアルタイムでやり取りを行い、商品の魅力を直接伝えて購買へと繋げることを目的としています。
配信者が実際に商品を使って紹介することで、サイズ感や質感、使用感などが視覚的に伝わり、従来のECサイトよりも深くユーザーに訴求できるのが大きな特徴です。
ライブ販売は特に中国で急速に普及しており、中国市場への進出を目指す企業にとっては、非常に有効なマーケティング手法となっています。
近年ライブ販売が注目されている理由

なぜ、ライブ販売が事業者に注目されるマーケティング手法となったのか、その理由を詳しく解説します。
中国市場で著しい成長を遂げている
中国のライブ販売市場は、2020年に約1兆2,299億元(約22兆円)に達し、2025年には約6兆4,172億元(約100兆円)にまで拡大すると予測されています。(出典:日本貿易振興機構 JETRO)
これほどまで爆発的に成長した理由としては、以下のような要因が考えられます。
- 消費者に強い影響力を持つKOL(Key Opinion Leader)の活躍
- Alipay+やWeChat Payなどのキャッシュレス決済の普及
- 即時配送サービスなどのデジタルインフラの整備など
例えば、トップKOLを起用したライブ販売では、高額な売上も多数報告されており、KOLの活用はライブ販売で重要な戦略として確立されています。
これらの要因が複合的に作用することで、中国は現在「ライブ販売の世界的リーダー」として注目されています。
2025年6月にTikTok Shopがリリース
巨大なユーザー母数を持つTikTokから、2025年6月に「TikTok Shop」リリースされました。
TikTok Shopは、ショート動画やライブ配信から直接商品を購入できる「ディスカバリーコマース」です。ユーザーは気になる商品を見つけたら、TikTokアプリ内でそのまま購入・決済まで完結できる仕組みとなっています。
TikTokは、2024年11月時点(TikTok公式調べ)で、国内月間アクティブユーザー数3,300万人以上を誇るショートムービープラットフォームです。
日本国内では18歳〜34歳のユーザーが約6割を占め、1日あたりの平均使用時間は96分間と、YouTube(82分)、Instagram(54分)を上回っています。
このことからも、TikTokは多くのユーザーに対して効果的に商品やブランドを訴求できる新たなマーケティングプラットフォームとして、事業者から高い関心を集めています。
国内と越境でのライブ販売を比較

日本国内と海外のライブ販売を比較すると、プラットフォーム環境に大きな違いが見られます。
具体的にどのような違いがあるのか、日本と中国のライブ販売を比較しながら解説します。
国内ライブ販売
日本のライブ販売は、中国と比べるとまだ認知度や利用率が低い状況です。
そのため、販売力のある配信者(ライブコマースに特化したインフルエンサー)の不足や、ライブ販売に特化したプラットフォームの未発達が普及の壁となっています。
そうした状況の中でも、ECサイトと連携し、ライブ配信中に商品URLや購入ページへ誘導できるアプリやプラットフォームの展開が進んでいます。
現在、日本国内ライブ配信プラットフォームは大きく3つのカテゴリに分類されます。
1. SNS型
Instagram、TikTok、YouTubeなどのSNSプラットフォーム上でライブ配信を行い、自社ECサイトや購入ページへ誘導する形式。
ユーザーとのインタラクションを活用しながら購買を促進します。
2. ECモール型
楽天市場やYahoo!ショッピング、Amazonなど、大手ECモールが提供するライブ配信機能を活用し、モール利用者に商品を訴求する形式です。
3. SaaS型
Shopify、Livekitなどの外部サービスを活用して、自社ECサイトやWebサイトにライブ配信システムを組み込み、ライブ視聴から商品購入までをワンストップで提供します。
以下は、日本国内でライブ販売が可能なプラットフォームの例です。
カテゴリ | プラットフォーム例 | 特徴 |
---|---|---|
SNS型 | Instagram Live, YouTube Live, TikTok LIVEなど | ・無料で利用できるため参入のハードルが低い ・既存フォロワーへの集客が容易 |
ECモール型 | ライブTV(au PAY マーケット)、楽天市場ショッピングチャンネルなど | ・ECモール内のユーザーがターゲット ・既存顧客へのアプローチが可能 ・限定セールやイベントと連動した集客が有効 |
SaaS型 | HandsUP, Live kit, SHOPROOM | ・自社ECサイトと連携可能 ・簡易ECの構築が可能 ・ライブ販売に関する運用サポート付き ・機能カスタマイズにも対応 |
越境ライブ販売
世界のライブ販売市場をリードする中国を例にあげると、日本国内のライブ販売と比べて、配信から購入・決済・物流までをワンストップで提供する高機能なプラットフォームが整備されています。
インフルエンサー(KOLなど)を採用したプロモーションも、日本と比べて活発に行われており、消費者の関心度も高いです。
中国独自の大規模かつ高機能なライブ販売プラットフォームは、越境ECを検討する日本企業にとって魅力的な選択肢となっています。
以下は、中国における代表的なライブ販売プラットフォームの例です。
プラットフォーム名 | 特徴 |
---|---|
淘宝直播(タオバオライブ) | ・中国EC最大手アリババグループが運営 ・2016年頃の黎明期から成功事例が多数あり |
抖音(Douyin) | ・中国版TikTokで、ショート動画+ライブ配信を融合した物販モデルで急成長 ・高いエンタメ性とユーザー滞在時間が強み |
快手(クアイショウ) | ・抖音と同様にショート動画プラットフォームとして人気 ・エンタメ要素が強く、物販との相性が良い |
RED(小紅書) | ・若年女性に人気を誇るSNS型ECアプリ ・コスメ、ファッション、ライフスタイル領域のインフルエンサーが多数利用 |
Weibo(ウェイボー) | ・中国圏最大のソーシャルメディア ・中国、台湾、マレーシア、シンガポールなどの中国語圏で広く利用されている ・日本企業によるライブ販売の成功事例あり |
WeChat(微信) | ・月間アクティブユーザー13億人以上の中国最大のメッセージングアプリ ・WeChatミニプログラムのライブ配信機能でマーケティング&販売が可能 |
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ライブ販売のメリット

ここからは、事業主がライブ販売を行う4つのメリットについて解説します。
動画で臨場感のある購買体験を提供できる
ライブ販売は動画を通じて、テキストや静止画では伝わりにくい商品の質感・サイズ感・機能性を視覚的に表現できます。
視聴者に実店舗と近い臨場感のある購買体験を与え、商品の魅力を具体的にイメージさせることが可能です。
ライブ配信限定の特典やセールと絡めた企画では、消費者の衝動買いを促進できるため、売上向上にも繋がります。
消費者と双方向コミュニケーションを図れる
ライブ配信中は、チャット欄で視聴者とコミュニケーションを図れます。
これにより、視聴者の商品に対する疑問や不安をリアルタイムで解消し、実店舗での接客に近い安心感を与えることが可能です。
また、視聴者の生の声を聞きながら商品の改善・開発に活かせるため、マーケティング手法としても有効です。
動画視聴から購入までスムーズな販売が促進できる
ライブ販売では、動画の視聴を中断せずに別アプリやECサイトに遷移できます。(プラットフォームにより仕様は異なります)
そのため、視聴者の購買意欲が高まったタイミングで、スムーズに購入手続きまで完了させられる仕組みとなっています。
顧客の利便性が向上し、従来のECサイトである離脱やカゴ落ちの抑制としても効果的です。
インフルエンサーコラボでファン層を獲得できる
ライブ販売では、知名度や影響力のあるタレントやインフルエンサーを配信者として起用する戦略が非常に効果的です。
ブランドの認知度向上や新規顧客獲得を狙いたい場合、フォロワー数の多いインフルエンサーを起用すれば、フォロワーのファン層を新たな購買層として獲得できる可能性があります。
まだ認知度の低いブランドでも、インフルエンサーを通じて信頼を得やすくなる点も大きなメリットです。
ライブ販売のデメリット

ライブ販売を始める際、最低限必要な準備やリスク管理があるため、詳しく解説します。
配信環境の整備が必要
リアルタイムで進行するライブ販売では、ネットワーク不調や機材トラブルにより、映像や音声の途切れ、配信中断などのリスクが伴います。
そのため、有線LANでの接続やスペックの高いWi-Fiルーターの使用など、安定した通信環境を整えておくことが重要です。
必要に応じて高スペックな機材を購入し、事前のリハーサルやトラブル発生時のシミュレーションも欠かせません。
事前告知による集客が必要
ライブ販売では、視聴者の数が売上に直接影響するため、配信前の集客が必要になります。
例えば、配信元のプラットフォームやSNSでの告知、広告配信、メルマガなどを活用して積極的に集客します。
さらに、特典や割引キャンペーンで視聴者の興味を引き、当日の参加を促す工夫も重要です。
出演者のリスク管理が必要
ライブ販売の出演者は、商品・ブランドの信用や売上に影響するため、人選とリスク管理は徹底しなければなりません。
例えば、出演者には商品の仕様を正しく理解してもらい、視聴者からの質問対応にも的確かつ丁寧に行うことが求められます。
配信中の失言や不祥事はブランドイメージを損なうリスクがあるため、台本の作成やリハーサル、緊急時の対応体制が不可欠です。
企業がライブ販売で成功する秘訣

ここからは、ライブ販売で集客や新規顧客・リピーター獲得、商品購入という成果を上げるために重要なポイントを解説します。
ライブ販売と相性の良い商品の選定
ライブ販売が持つ特性から、視覚的に伝わりやすく、使用感をイメージしやすい商品が特に効果を発揮します。
【ライブ販売と相性の良い商品のジャンル】
- コスメ・スキンケア:質感や肌触り、色味、実際の使い方をその場で見せられる
- ファッション・アクセサリー:スタイリングや着用感を実演できる
- 食品・健康食品:実食によるリアルなリアクションで説得力が高まる
- 家電・ガジェット:デモンストレーションで機能性を訴求しやすい
一方で、高額な不動産や法人向けシステム、実物がない抽象的なサービスなどは、視覚的な訴求や即決購入に向かず、ライブ販売との相性は良くありません。
視聴者の感情に訴求しやすく、即決性のある商品の選定が、ライブ販売で成果を得る近道となります。
限定イベントやセールと連動させる
ライブ配信では、単なる紹介で終わらせず、視聴者の購入意欲を刺激する限定的なキャンペーンを企画することが成功のカギとなります。
例えば、以下のような限定イベントやセールとの連動が効果的です。
- ライブ配信限定の割引クーポンを提供する
- 視聴者だけが購入できる数量限定セットを販売する
- 視聴者に先着順でノベルティをプレゼントする
- 視聴者限定の抽選会やゲームを実施する
このような特別な体験を与えることで、視聴者の購買意欲が高まり、そのまま商品の購入に繋がりやすくなります。
商品・ブランドと親和性の高いインフルエンサーの選定
ライブ販売の新規顧客獲得と売上向上に大きく影響するのが、インフルエンサーの選定です。
単にフォロワー数が多いインフルエンサーを起用するのではなく、以下の観点でのマッチングが成功のカギを握ります。
- 商品・ブランドのターゲット層と親和性の高いインフルエンサー
- 商品ジャンルへの理解度が特に高いインフルエンサー
- 配信スキルと商品の説明に長けたインフルエンサー
- 過去のライブ販売でコンバージョン実績が高いインフルエンサー
企業側としては、インフルエンサーにブランドイメージをしっかり共有し、世界観に共感してもらうことも大事です。
また、配信ではリアルな体験やストーリーを語ってもらい、視聴者の購入意欲を自然に引き出すスキルが求められます。
インフルエンサーの選定・採用が自社で難しい場合、インフルエンサーマーケティング代行会社などに依頼しましょう。
アーカイブを残して視聴意欲を喚起する
ライブ配信の視聴者は、リアルタイムで視聴できる人だけではありません。
アーカイブ(見逃し配信)の公開により、配信後も継続的に集客・販売に繋げる導線を残しておくことが重要です。
視聴者にアーカイブをたくさん見てもらうためのポイントは、以下のとおりです。
- SNSやメルマガでアーカイブ公開中の案内を行う
- 商品紹介であることがわかるタイムスタンプを付けておく
- ライブ配信限定の特典を数日間だけ継続させておく
- 動画内で商品の購入リンクやクーポンコードを明記しておく
アーカイブは、ライブを見逃してしまった潜在顧客にアプローチできるだけでなく、ライブの成果を資産化する手段としても有効です。
まとめ
ライブ販売は、従来のECサイトでは実現できない「立体感のある商品説明」や「視聴者とのリアルタイムなやり取り」を通じて、視聴者に安心感のある購買体験を提供します。
ライブ販売において巨大な市場を持つ中国では、日本よりもライブ販売に対する消費者の関心や信頼が高く、高機能なプラットフォームも充実しています。
世界に遅れをとっている日本でも、2025年6月に「TikTok Shop」がリリースされ、若年層を中心にライブ販売がより注目される可能性があります。
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